【整形外科疾患】変形性膝関節症に対する”人工膝関節置換術”について2021.11.05
40歳以上で「膝の痛み」でお悩みの方は全国で約800万人と推定されています。その大部分が、変形性膝関節症によるものと言われています。主に加齢により膝関節の軟骨が徐々にすり減り、膝の痛みが出現する病気です。
通常はレントゲンで、関節裂隙(軟骨の厚み)を調べることで、変形性膝関節症の進行度を知ることができます。しかし、初期の変形性膝関節症はレントゲンでは異常がない場合もあり、軟骨、半月板の評価のためMRI検査を行うことが大切です。また、日本人などアジア人はO脚が多いですが、O脚(荷重軸が内側を通過)は変形性膝関節症進行の危険因子と言われており、立位下肢全長レントゲン撮影で下肢アライメントを調べることも治療方針を考えるうえで重要となります。
(変形性膝関節症の進行度)
変形性膝関節症の治療は①手術以外の方法(保存療法)と②手術による治療に分けることができます。
保存療法には運動療法、ヒアルロン酸関節内注射、消炎鎮痛剤、装具療法などがあります。保存療法では十分な効果が認められず、疼痛により日常生活に支障をきたすようになった場合、手術療法を検討します。手術は高位脛骨骨切り術などの膝周囲骨切り術、人工膝関節単顆置換術、人工膝関節全置換術があります。
人工膝関節単顆置換術は、内側もしくは外側のみの膝関節軟骨がすり減っている方に行う手術で、人工膝関節全置換術とは異なり、片側のみを人工関節に置き換えます。比較的年齢が高く、活動性の低い進行期の変形性膝関節症の方や、膝骨壊死の方が適応となります。
この手術のメリットは、人工膝関節置換術と比べ、術後可動域が良好で(正坐ができるかたもいます)、筋肉、靭帯を温存するため早期の術後回復が可能です。
。
人工膝関節全置換術は、変形性膝関節症、膝骨壊死、関節リウマチなどによって傷んで変形した膝関節表面を人工関節に置き換える手術です。傷んだ部分を人工関節で置き換えるので優れた除痛効果があり、O脚などの変形は治り、まっすぐな脚になります。
膝の曲がりは、手術前の角度に影響されますが通常120度くらいで、できなかった正坐ができるようになるということはありません。最近は人工関節の素材やデザインが進歩して、耐久年数は平均15年から20年とされています。人工関節は痛みを取り除き、正常な日常生活がおくれるようになる非常に効果的な手術ですが、人工関節ですので長期に使用するためには退院後の定期健診が不可欠です。
また、当院では人工膝関節置換術の際、先進医療のナビゲーションシステムを導入しています。人工膝関節置換術において良好な治療成績を得るためには、正確なインプラントの設置が重要であり、ナビゲーションシステムの導入により、より精度の高い手術が可能となっております。